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中日クラウンズ 2019

マムシのジョーの悲哀。尾崎直道は「令和に染まれるかは分かんない」

大会初日は石川遼と、いま破竹のアマチュア金谷拓実さんと、ジャンボ尾崎の同組対決に注目が集まるが「アニキは36ホール、できるんだろうか。それが心配。完走してくれればいいな」と、長兄を気遣う弟もまた「どっちかっていうと、俺もそっちの域に入ってきちゃった。まだ早いのに」と、悲哀たっぷり。

尾崎直道、2005年のこの中日クラウンズまで実にツアー通算32勝を重ねてきた永久シード選手の一人である。
1956年生まれはジャンボらとともに、こちらもまた昭和を代表するレジェンドだが、そのうち平成元年の1989年から重ねた勝ち星は22。「…数えてみりゃ平成のほうが、多いんだよな」。小さなつぶやきに、矜持がにじむ。

平成3年には初の賞金王。同7年からは、米ツアーで8シーズンを戦った。50歳のシニア入り後も精力的に日米を行き来した。
「それはもう…苦しかったですね。イップスの戦いと、体のきつい中でも頑張ろうとしたから。おかげで今は背骨がいろんな形になっちゃって…。それでもファンを裏切るわけにはいかない。昭和の精神というか、俺は日本ツアーに育ててもらったから。アメリカに出ながら日本ツアーも最低限こなしていこうと。その信念で続けてきた」。

長兄の将司は″ジャンボ″、次兄の健夫は″ジェット″の愛称に続いて、末弟は、そのしぶといプレースタイルも加えて「マムシのジョー」との異名がついたととおりに自らに、鞭を打ち続けてきた直道だったが、ついに無理ができなくなったのは、2年前に還暦を迎えたころ。
シニアの試合中に、立つのもやっとの腰痛を発症して以来、「今はシニアの中での元気比べにも勝てない。ファイトのファの字も出ない」と嘆く。

まして、昨年5月の関西オープン以来のレギュラーツアーとなる今週のこの「中日クラウンズ」の初日の組み合わせは秋吉翔太と星野陸也。
若い飛ばし屋2人に挟まれ「俺も36ホールできるかな…」と、まさに兄のジャンボを気遣う前に、なのである。

「なるべくその時代、時代に生きていきたいなとは思いつつ、けっきょく平成の人間とも″嗚呼やっぱり、交わっていかれないな″と思ったから。ましてや令和の時代になんか、染まれるかどうかわかんない」。
激動の昭和、平成を駆け抜けてきた62歳の口からは、いよいよ新時代の到来にもついボヤキ節すらこぼれる。

「俺だって、4日間やるなんて大変なんだ」と、そこは認めざるを得ないが「たまに若い子の中で回れると、刺激はもらえるというのはある。どうしようもなく叩きのめされるとは思うけど、その中でゴルフをやるのは意外と新鮮。それで4日間やれれば最高だね」。
初日は、兄ジャンボのひとつ前の組で11時20分からティオフ。令和最初の今大会は今年60周年と、お祝いムードに沸く和合でレジェンドたちの競演にも目が離せない。

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