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パナソニックオープンゴルフチャンピオンシップ 2021

”泣き虫啓太”が快挙を達成。@中島さんが史上5人目のアマV

涙もろくていけません©JGTOimages
”泣き虫啓太”のV争いは、礼に始まり礼に終わる。
日体大3年の中島さんが、アマとしては史上初のプレーオフ制覇(JGTO発足後)で史上5人目のアマVを達成した。

通算18アンダーで追いつきプロ13年目の永野竜太郎との一騎打ち。
1ホール目のバーディチャンスで浮かんだのは、ジュニア期から背中を追い続けてきた尊敬するプロ1年生の顔だった。

「金谷(拓実)さんなら絶対入れる」。
でも、惜しくも外して短いパーセーブの勝利も「心臓の音が聞こえるくらいに緊張した」。

直後は笑顔も、はしゃぐこともなく、永野の祝福も凜々しく受けた。
ガッツポーズもグリーンの脇によけてから、ほんの小さく。
本当は、永野の応援に来たプロたちにかけられた冷たい水も謹んで受けた。
「アマチュアで、学生の立場なんですけど、プロの試合に出させていただいて。本当に、感謝しかない」。
お礼の言葉と共に、一挙に溢れ出した涙は大きなバスタオルでも足りなかった。

少し歳が離れた姉二人の末っ子に生まれた。
「甘やかされて育ったので。涙もろくて気持ちが高ぶると、すぐ泣いてしまう」。
金メダルを獲得した2018年のアジア大会はもちろん、2位で負けた今年4月のプロ開幕戦や、初日に「80」叩いて予選敗退した8月の全米アマでも涙。

昨年10月には「金谷さんがプロ転向した時も泣きました。寂しくて…」。
自称・泣き虫の21歳だが、プロの試合でプロ顔負けのポーカーフェイスと信念を貫いた。

今週、京都市内のジムに毎日通ったのも、ナショナルチームのジョーンズコーチに「14ホール、全部ドライバーを振る」と、宣言したのもマスターズの出場権がかかった11月の「アジアアマ」を想定してのこと。

風雨の強いこの日はスタートでさっそく曲がり、「間違っている、と思った。逃げたい、刻みたいと思った。でも、僕の立場でそれはない。それでバーディ獲っても嬉しくない」。

左右にOB杭が見え、高低差のきつい難コースで刻む多くのプロを横目に、フェアウェイキープは全体の68位と低迷。
それでも、キャディをしてくれた大学後輩の鈴木隆太さんにドライバーを渡され続けて「行くしかない。ブレずにやれて自信になった」。
倉本昌弘、石川遼、松山英樹、金谷拓実に次ぐ史上5人目の快挙が達成された。

1差の4位タイからスタートした最終日は1番ティでフェアウェイを向いて一礼して出て、最後はグリーンに向かって深々と頭を垂れた。
「いつも支えてくれる家族や地元で応援してくれる方々、大学のチームメイトやコーチ。いつも、楽しくゴルフをさせてもらっている」と、涙ながらに感謝した。

「今まで悔し涙ばっかりだったので、うれし涙を流せて嬉しいです」。
照れ隠しで赤い目を、ゴシゴシこすった。

プロ宣言ならすぐシード選手になれるが、このままアマ生活を続けて、アマ世界1位の「マコーマックメダル」の授与で獲得した来年の「全米オープン」と「全英オープン」に出場。
さらに11月のアジアアマで悲願達成ならマスターズにも出られる。
「世界中で、たくさんの人に応援していただける選手になるのが目標です」と、”泣き虫啓太”はニッコリした。

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