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ウッドワンオープン広島ゴルフトーナメント 2007

谷口徹が今季初優勝

プレーオフ1ホール目の18番で、6メートルのバーディパットを決めてトレードマークの拳を握る。さらに2歩、3歩とステップを踏み、もう一度改めてアッパーカットのガッツポーズ。

さらに、地元広島のゴルフファンで満員のギャラリースタンドに向かって勝利の咆哮だ。
そんな夫の姿を見るにつけ、妻・亜紀さんはしみじみと思う。
「競り合って最後に勝つのがパパのスタイル。一番、彼らしい勝ち方です!」。

4打差首位につけた前日3日目の夜に電話で聞かれた。
「明日、来る?」。
「行けるかどうか分からない」と、亜紀さんは答えた。
今年、これまで6試合で首位に立ちながら、勝てなかった。
「私たちがいることで、プレッシャーがかかって力んでしまうのではないか」と懸念したためだが、その一方で亜紀さんはもう心に決めていた。

「明日はこっそりと応援に行こう」。
1歳と9ヶ月になる長女・菜々子ちゃんを抱いて翌朝7時30分、新大阪発の新幹線に飛び乗ったのだ。

一度は逆転されながら、土壇場で再び首位に並んでもぎとった今季初優勝。
初めて生で見る夫の優勝シーンは、本当に感動的だった。
そして、戦う男の厳しい表情から一転して、父親のそれになる瞬間も。

タイのプラヤド・マークセンとの激戦を制し、12度目の優勝インタビューにのぞむ最中に、初めて家族の存在に気がついた夫は「やっぱり来てくれたんだ」と、嬉しそうにつぶやいた。

今年になって、負けて帰るたびに「ごめんね、パパ今週も勝てなくて…」と、本当に済まなそうに謝っていた夫。
まだ一度も、新しい家族の前で勝ったことがなかった。
「菜々ちゃんに早く優勝を見せてやりたい」が、最近の口癖だった。

18番のグリーンサイドから「パパ、パパ」と言いながら、ヨチヨチと近寄ってきた愛娘の顔を見るなり、たちまち相好を崩す。
マイクの前で、人目もはばからず赤ちゃん言葉で言う。
「菜々ちゃん、パパ勝ちまちたよ!」。
その表情は自宅で娘を風呂に入れているときと、まるで同じだった。

  • 娘の祝福を受けて、たちまち“パパ”の顔に
  • 大勢のカメラマンに囲まれて固まってしまった愛娘を促す父「はい、菜々ちゃんカメラに向かってぽーじゅ(ポーズ)して」

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