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僕らのツアー選手権 / 加納美智雄の選手権

今年の「選手権」で、自身6度目となる競技委員長を務めることになっていた加納美智雄は、しかし今年の宍戸をまだ一度も見られていない。

次週にも今年最初のコース下見をと、日程を調整していた矢先にコロナ禍が襲った。身動きがとれないまま、「選手権」の中止は決まった。

今年は、21回目を数えるはずだった。
日本と名のつくタイトルは、ほかに今年85回目を数える「日本オープン」や88回目の「日本プロ」、57回目の「日本シリーズ」など、どれも名だたる大会ばかり。

「その中でも歴史的には一番浅いのが『ツアー選手権』ですが、自分としましては、真のゴルファーの一番を決定する日本で最高峰の試合と考えております」。

主催者の一員として、常にその気概を持って大会に携わってきた。

かつては、加納自身もツアー選手を目指していた。
地元千葉県の習志野CCにキャディとして16歳から勤務。
その時、プロのトーナメントでジャンボ尾崎の末弟、直道のデビュー戦のバッグを担いで感動した。
それを機に、自らもツアーの道を目指して歩みだしたが、背筋痛など体の故障もあり、芽が出ないまま30歳を目前に断念。

その後、「別の形でツアーに関わりたい」と99年に、初代会長の島田幸作氏が起ち上げたJGTOの専門競技委員に志願。
2000年から従事し、数々のトーナメントに携わってきた。
「『選手権』はその中でも緊張感満載の、一番やりがいのある試合です」。

大会の要となるのはやはり、コースセッティングだ。

「世界に通用する選手の育成」をスローガンに、大会創生時から、JGTOが一貫して貫いてきた姿勢は「選手の能力を最大限に引き出すフェアな舞台作り」だ。

「選手のみなさんがそこに打って行けたらご褒美がつく。逆に逃げてハザードに行けば必ずペナルティが付く。フェアウェイの幅、芝の長さ、グリーンの硬さやスピード、ピン位置ひとつにとっても、選手のみなさんの真の技と実力を引き出すような舞台作りが一貫した目標です。その思いは私だけでなく、関わるすべてのスタッフも同じです」。

コロナ禍の影響は気がかりだったが、乙野圭司・グリーンキーパーの報告によると、今年も芝の状態は非常に良く、あいにく静まりかえった今週の開催週も、乙野キーパーらはすでに、来年大会を見据えたコース作りに動きだしているという。

会場が宍戸に移ってきた最初の03年から築いてきたコースとの信頼関係は、新型ウィルスにも壊せない。
「今年の順延は残念ですが、また宍戸のみなさんと、最高のセッティングを目指して、共に歩いていきたいです」(加納)。

乙野キーパーはじめコース管理のみなさん、スタッフのみなさん、これからも引き続き「ツアー選手権」ともどもJGTOをよろしくお願いします。

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