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マイナビABCチャンピオンシップゴルフトーナメント 2012

石川遼は「今の自分なら、真っ向勝負が出来る」

プロ転向後のツアー初優勝を飾った思い出の舞台で、2年ぶりのツアー通算10勝目を視界に捕らえた。5番で10メートルの下りのパットが転がり込んで、勢い付いた。

そこから一気に3連続バーディでリーダーボードに名を連ねた。
後半の上がりホールは、本人には納得出来るはずもないミスショットが一転、バーディになった点については、「それで“まっ、いいか”となってしまうのが、自分の中で一番怖い」と、反省と課題も忘れない。

「ミスはちゃんとボギーで終わったほうが、なぜああいうスイングをしてしまったのだろう、と自分の中に残るのに」と、自分に一番厳しい選手なだけに、何事もなくやり過ごすことを自分に許さない。
「17番なんかもティショットの当たりは薄かった」。それでも7番アイアンで打った160ヤードの第2打は1.5メートルにつけて結果的には見事なバーディではあったが「ドライバーのああいうミスショットは結果に関係なく、無くしていかないといけない」と、尽きせぬ向上心で、優勝争いに加わった。

4打差の首位には、韓国の金庚泰(キムキョンテ)。「2、3年前までは、見ていてかなわない、と凄く感じる選手だった」。2010年の賞金レースでも敗れた相手。
「あのころは、真っ向勝負を挑める相手ではないという印象があった」。

しかし、あれから互いに経験を積み、世界メジャーでの活躍を増やしてきた今なら「自分が持っているものをぶつけていける。今の自分なら勝負が出来る」と、自信を持って言える。

最終日こそ、「キョンテと最終組で一緒に回りたい」と堂々と、挑戦状を突きつける自信もついた。
技術力の向上を実感する一方で、失ってしまったと感じることも。

2008年大会でもそうだったが、「あのときはドライバーをたくさん持って、ドライバーで自分のスイングを作っていこうとしていた時期。一つの姿勢を貫くことが、自信を生んでいたし雑念も払拭できていた」。

ミスをしても、立ち止まることを知らなかった。
「あの時は実力不足だから、結果はどうでもいい、と。ボギーでもダボでも、結果はどうでも次のティグラウンドにあがればドライバーを持って、いいスイングが出来れば関係ないと思っていた」。

しかし、あれから勝ち星を重ねて、賞金王まで上り詰め、毎年、結果を求められる立場となって、「どうやったらうまく試合を戦えるかとかという風に、考えたくもなってくる」。
器用になった分だけ、ひたむきさは徐々に消えていく。
それが大人になる、成長するということのひとつの証でもある。
本人も、それは承知の上だ。
「もちろん結果も大事というのが今の自分のスタンス」。

それでも「あのときの自分が考えていたことを、すべて真似するというんじゃなくても、今の自分が掲げている課題だったり、これだけはやりたいと思うことには集中していきたい」。
お手本にしたいのは4年前の自分。
一心不乱にただひたすら自分の信念を貫こうとする姿勢。
「それが今年、今の自分に足りない部分。参考にしたい部分」。
勝てば史上最年少のツアー通算10勝目で、あの頃の輝きを取り戻す。

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