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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2012

藤田寛之が6打差の首位に

栄光へのカウントダウンが始まった。賞金ランキング1位の藤田が、今季はいよいよ最後の18ホールを残して、2位と6打差の単独首位につけた。

この日は、前半から順調にスコアを伸ばして、ここ東京よみうりでは昨年最終日の9番から続くボギーなしのラウンドも、7番で53ホール目を数えた。

と、その直後に突如として降り出した雨、強い風。気温も一気に下がって「ここはイギリスか、と」まるでリンクスコース並みの天候の急変に、さすがのベテランも動揺した。
8番で、3メートルのパーパットを外して「とうとう出たか」。

今週、初ボギーもこれに終わらず、次の9番ではスプーンを持った225ヤードの2打目で、「あまりにも風が強くて」。突風によろめいた。「体が動いてしまってちょろを打った」と、3打目は60ヤードも残った。連続ボギーも「続けては、もう嫌だ」と、すぐに悪い流れを断ち切った。

折り返して10番で3メートルのパーセーブ。そして11番では手前から5メートルを沈めて「藤田さんは、誰にも流れを渡さないという感じ」とは、同組の石川遼。
これぞ賞金ランキング1位の圧倒的な強さに「僕らは藤田さんの手のひらで、踊らされているような感じ」と嘆息した。

昨年の再現を誓う谷口徹は、かねてより「藤田くんと最終日に回りたい」と熱望しており、藤田にも折に触れてそう言っていた。
石川が「藤田さんは、ルーク・ドナルドのようなゴルフをしている」と表現したり、谷口にはあからさまに敵対心を剥き出されると、かえって藤田には、それが「嬉しくてたまらない」。

初の賞金王は、師匠の芹澤信雄をはじめ、周囲の誰もが言うように確かに「ひとつの勲章ではあるのだろう」。藤田もそこは認めるが、いよいよ最終局面を迎えてもなお、この男の本心は、「賞金王はただ、一番賞金を稼いだ人というだけで、僕の中では最強とはいえない」。

この男が考える最強の男とは、谷口や石川のように、藤田自身が最強と認める男たちから、あいつこそ最強の男だと言われること。「周りから、あいつにはかなわないと思ってもらうこと」。

そしてそう言われるたびに、嬉々として藤田は練習場に向かう。「もっともっと強くなって、もっとそう言ってもらえるように」。いっそう技を磨いていこうと、藤田は思う。

「プロゴルファーはゴルフの職人。その中で、誰よりも職人芸が優れているのが、プロの中のプロ」。それがいま、もっとも強い男のこだわりだ。

この日は今年一番の冷え込みにも、2位との差は縮まらなかった。「タフな1日」も貫禄の68で、他を寄せ付けずに、大会史上初の3連覇と賞金王と、世界ランク50位の称号をかけた最後の戦いに挑む。

「すべてにおいて、明日の18ホールにかかっている。集大成になる。3つとも、必ず獲って帰るというつもりでやりたい」。そのためにも、いよいよ盤石の体勢を築いて、「それでもプレッシャーは、かかるとは思いますけど。ショットはへろへろですけど、疲れてもいますけど。ベテランですからね」。いつも謙虚な男が最後にそう言った瞬間に、全身から揺るぎのない自信がみなぎった。

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