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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2012

藤田寛之は2日目にして5打差の首位にも「ぶれずにやろうと思う」

静かに、着実に、栄光への階段をのぼっていく。日替わりで挑みかかってくる精鋭たちも、なぎ倒す。前日初日は「危なげのない」、ほぼ完璧な61。しかしこの日はややショットに精彩を欠いて、あれほど苦しい1日も、やっぱり他の誰も追いつけない。むしろ、2位との差をさらに広げた。

この日、同じ最終組で回った武藤俊憲。前日は、藤田に完敗した師匠の谷口徹から、「任せた」と、指令を受けた。
しかし「師匠でもかなわなかったのだから。藤田さんは、僕の手に負える人ではなかった」と“チーム谷口”を連日、撃破。
そんな顛末をあとで聞くにつけても「それはやっぱり、気持ちいいですね」と、43歳の笑顔もほころぶ。

耐えて、耐えて、耐え忍んだ甲斐はあった。
再三のピンチも、得意の小技で粘った。
8番のパー3では、グリーン右奥のエッジから15メートルの2打目は「凄く難しいライン」と、そこからまだ2メートルも残したパーパットをしのいだ。
9番でもまた右のエッジから、今度は「カップまで90°? ・・・いや、100°か120°はフックするライン。10回やっても、2パットで行けるのは2,3回くらいというような」。
表面上は余裕のタップイン・パーにも顔色ひとつ変えなかったが、内心は「迷いはあった」と、冷や汗もののハーフターンも、試練はこれで終わらず、13番でもアプローチで1.5メートルに寄せたパーパットをしのぎ、そして最後の18番パー3でも、左のラフに外したアプローチで勇気を振り絞った。

「少しでも弱いと手前で垂れて、戻ってしまう。真上から、傾斜を使って垂らして来ようと、しっかりと打ってみました」と、最後の締めも執念のパーセーブで魅せた。

ボギーなしのラウンドを、2日続けて「自分でも、どこまで続けられるんだろうというのがあったので。だから最後のアプローチは嬉しかった」と、微笑んだ。
「昨日と今日のノーボギー。気分が良いのは昨日だけれど。苦しみながらもスコアを伸ばせた。今日の4アンダーは、自分の特徴を生かしたゴルフ。やろうとしていることが出来たという点では昨日も今日も合格点」。栄冠を前にして、日に日に高まる充実感。

もうひとつ、嬉しいのは6番と12番で計測中のドライビングディスタンス。2日間平均で291ヤードを記録して、現在3位タイ。しかもこの日は6番で319ヤードも飛ばして「ちっちゃいけど飛ぶんです」と、そこは嬉々として胸を張った。
「でも、あれ以上は飛ばない・・・。あそこは会心でしたね」と、身長168センチのベテランが苦笑した。

2日目にして5打差をつけて、2日連続の単独首位は大会史上初の3連覇と、賞金王と。「だんだん、近づいてきている」という実感が、本人にもある。
一方で、「どこか目標がぼやけてしまう不安もある」。
自分としては、狙いたいのはあくまでも年末の世界ランク50位内。なのに、「周りの声が大きくて」。初の賞金王獲りを期待する声。「流されている自分もいる。でも、そこはぶれずにやりたいと思う」。

あまり2位との差がつきすぎるのも、かえって戸惑う。
「トップに立ってる自分があまり好きではないので。僕はどちらかというと、追いかける方が気持ち良い。これだけ差がつくと、曖昧になるんです。もうちょっと後続が来てくれるほうが、ゲームプランも鮮明になる」と、混戦模様を所望する余裕だ。

大会はいよいよ折り返し地点を迎え、週末は目下、最強の賞金ランク1位に今度は誰が、挑みかかるか。
「ハン・リーは、ビッグスコアが出る大型選手。遼も、非常にプロ意識が強い選手で、スイングも大好きだし、歯切れの良さも好き。一緒に回りたい選手の一人」と、3日目の相手にも、不足はない。

次々と襲いかかる好敵も、明日はどんなゴルフでかわそうか。
「とにかく、自分はひとつでもいいからスコアを伸ばすことに集中してやる。守らず、攻めすぎず、いつもどおりにやっていきたい」。
栄光の瞬間まで、残るは2日。

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