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日本ゴルフツアー選手権 Citibank Cup Shishido Hills 2012

金庚泰(キムキョンテ)が暫定2位に浮上

キャディの児島さんの指摘でよみがえったショット。グリーン上も、共同作業でラインを読み切る。
今季はオフが開けて、久しぶりの再会に、専属キャディの児島航さんは、金の異変に気づいていた。
「キョンテ、アメリカに行って、力が入っちゃったんじゃない?」。
「そんなことはないよ」と金はあっさりと否定をしたが、米ツアーのパワーゴルフに揉まれて帰ってきて、調子を崩す選手は多い。
児島さんも「キョンテもきっとそうだろう」と、思った。

確かに、周囲の選手にも、さかんに「キョンテは飛距離が伸びた」と、言われたが、しかし安定感が何よりアドバンテージの選手が、特にティショットで曲がりに曲がった。

「それでも出場した試合では必ず予選を通って、そこそこの順位にはいる。それはやっぱりさすがだけれど」と、しびれを切らした児島さんが、改めてこう伝えたのは2週前のとおとうみ浜松オープンだ。
「キョンテ、前よりスイングのリズムがかなり早くなっているよ」。

これまでにも散々、ストレスをためていたから、今度は素直に耳を傾けた。
「今年も冬に米ツアーに行って、“今のスイングじゃダメだ”と思ってしまった。いつも心がけていたことをすっかり忘れて、僕も他の選手と同じように、もっと飛ばしたいと思うようになった。それで確かに以前よりは飛ぶようにはなったけれどもスイングで、常に力が入って曲がりまくった」。

児島さんの言葉で反省をした金は、基本に立ち返った。
「前みたいにもっとゆったりとスイングしよう」と心がけるようになって、徐々に持ち味が戻ってきた。

無類の安定感。

先週も、初日に2位につけながらもそれが4日間続けられなかったのは仕方ない。
「かなり調子を崩していたので。むしろ、まだまだかかるだろうと思っていたけど、やっぱりさすがですね」と、児島さんも舌を巻いた、この日の64だった。

左に曲げたティショットが跳ね返って出てくるラッキーもあり、8番はアプローチでOKパーを拾った。
9番は、一度は右に外した第2打が、キックして戻ってきた。ピンチが一転、上から2メートルのチャンスに変わった。これを逃す手はなかった。しっかりとねじ込んだ。

一昨年の賞金王が、ボギーなしの7アンダーをマークしてV争いに加わった。
一昨年の日本オープンの覇者は、今週もメジャータイトルにこだわる。今季のツアープレーヤーNO.1決定戦。「毎年タフなセッティングは、良いプレーをした選手とそうでない選手の差がはっきりと出る」。
すっかり上達した日本語が続く。
「僕にとってもこれは特別な大会です。ここで勝つことに意味がある。後々まで名前が残る」。
静かな語り口に、かえって底知れぬ凄みを感じさせるのは、相変わらずだ。


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