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日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ Shishido Hills 2017

2017年度のツアープレーヤーNO.1はショーン・ノリス

南アの35歳が、世界のアオキの鼻を明かした。今年のツアープレーヤー日本一は、ミドルネームもきちんと入れるとショーン・パトリック・ジェイムス・ノリス。
4打差の圧勝を飾った。
通算13アンダーは、JGTO会長の目論みをはるかに超えた。
「私は自信を持って、宍戸をセッティングしたつもりだったんだけど…」と、青木功。開幕前は、2位のスンス・ハンの通算9アンダーあたりが、優勝スコアになるだろうと踏んでいた。あっけなく、越えられた。
「それはたぶん10番が入った分だ」とはちょっぴり青木の負け惜しみ。
181ヤードの2打目を7番アイアンで直接入れた。このパー4のイーグルから一人旅は始まった。

初出場の昨年は5位と、もともとノリスには宍戸との相性の良さに自信があった。「でもコースが簡単とは絶対に言いません」。言ってしまえば青木のプライドを、ますます刺激してしまうだろう。「宍戸を甘く見られたかもしれない」と悔しがり、「来年はもっと難しくしようか…」などと、さっそく頭を巡らす青木を少しでもなだめるためにも、ぜひ言っておきたいのは「ただ、コースと僕のプレースタイルが、凄く合っているということです」。

それはフェアウェイをとらえた瞬間、優勝を確信したという最難関の17番、ティショットのハーフショットに凝縮された。
低いフェードは宍戸の森をかいくぐり、狭いフェアウェイにも正確に飛ばせる。
特に後半のアーメンコーナーではアイアンで刻み倒して、したたかに安全策を貫いた。
昨季の「レオパレス21ミャンマーオープン」で1勝を飾った時は、折しも世界的なルール改定の直後でアンカリングの禁止が始まっても頑固に握り続ける長尺パターもこの日冴えた。
11番の6メートルや、13番の7メートルなど長いバーディトライもスコスコ入れた。
3打差で迎えた18番も、6メートルをあっさりとウィニングパットに変えてみせると最終組で競ったジョーンズも、ハンも「ノリスがあまりに良いゴルフをするので。単独2位になるのが精一杯だった」と、苦笑いを浮かべるしかなかった。

母国の英雄アーニー・エルスは酔うと必ず勝負を仕掛けてくるが、腕相撲では負けたことがない。
8歳から旧知の仲も、特に5年前から親交が深まったというメジャー4勝の大先輩が、いつも言うのは「ゴルフは我慢だ」。
ここ宍戸でこそ教えが生きた。
「絶対に、日本語も覚えなくちゃいけなくなった」。
ツアープレーヤー日本一の称号には、優勝賞金3000万円と何より5年シードがついてくる。
表彰式のあとのボランティアのみなさんとのささやかな祝賀会で、乾杯のワインを一気飲みしていたずら顔で、「もっと呑んだらもっと日本語が上手くなるかも?!」。
昨年の初シード入りを機に1年過ごした日本が大好きになった。
「アメリカは僕には広すぎる。でも日本は人と人の距離がとても近くてみなとても親切だから」とこの先、たまに“出稼ぎ”には出るかもしれないが「すぐにまた日本に帰ってくる」。
10歳下のキャンディスさんと、まだ2ヶ月の新婚ほやほやでも、単身赴任は今後も続ける。
若妻にはせめてプレトニアの新居に今回のビッグマネーで、彼女の好きなだけ新しい家具を揃えてあげる。

ツアー2勝目の特典として、WGCブリヂストン招待の出場権に加えて今季、海外初戦から今大会までが対象の“日本予選ランキング”で権利のある2位に浮上し、同1位の宮里優作とともに、来月7月の“全英切符”も手に入れた。
「父のパトリックはもう80歳になるのですが、全英オープンに行くのが長年の夢でした。どんなに喜んでくれるか」と言うと、ブルーグレーの瞳が少し潤んだ。
「僕が出場することで、日本ツアーのクオリティを証明したい」と夢の聖地にも、日本代表のつもりで挑むつもりだ。
  • 表彰式のあとのボランティアさんたちとの祝賀会で、ワインを一気呑み!

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