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2024年の初シード選手をご紹介 ⛳ 米澤蓮は、怖くない!

2024年を初シードで迎える選手は14人。

その中でも、賞金王の中島啓太(なかじま・けいた)や、2位の蟬川泰果(せみかわ・たいが)に次ぐ3番目の昇格選手である。


昨季の賞金ランキングは22位につけた。  2023年賞金ランキング
米澤蓮(よねざわ・れん)は、24歳。
プロ4年目の春を待つ。



今月9日に、3週間の豪州遠征を終えて、いったん戻ってきたばかりだ。

豪州ツアーに2試合出て、残りの6日はアマ選抜のナショナルチーム時からお世話になるコーチのガレス・ジョーンズ氏と合宿。

試合で得た感触を踏まえた調整と、将来の世界進出を見据えて取り組み中の課題をおさらいしてきた。



「プロとして生き残っていくためにも、長期的な目標をたてながら、いま何を改善できるのか」を改めて、恩師と確認して地元に帰った。


この時期の岩手県・盛岡市内は例年ならほぼ一面銀世界。「でも、今年は雪は降るけど根雪にならず、今はほぼ雪がない状態です」。

ゴルフ場も間違いなく軒並みクローズのはずだが今年はどういうわけか、どこもかしこも通常営業中。

「近所のおじいちゃんたちがみんな、言ってます。80年以上生きてきて、こんな冬は初めてと」。

これも温暖化の影響か、なんなのか。
いずれにせよ、例年以上にオフ練習がはかどるのはありがたい。


“吉報”を聞いたのは、豪州から帰ってきてすぐ。
欧州・DPワールドツアーで星野陸也(ほしの・りくや)が初優勝を飾った。

「去年も2週連続で2位に入ったりされてましたので。いつ勝ってもおかしくない、素晴らしい選手」と、特に驚きはしなかったが、「僕らみたいに次に続いていきたい選手の励みになる」と、高まった。

「今年は1勝して、賞金3位内に入って、自分もヨーロッパへ」と、より目標が明確になった。


昨季の同ツアーで優勝した久常涼(ひさつね・りょう)は、ナショナルチーム時代に切磋琢磨した後輩のひとりだ。

SNSのアーカイブをのぞいてみると、米澤が数々のタイトルを獲ったアマ期の写真で共に写るのは、久常や中島や金谷拓実ら、今や男子ゴルフを背負って立つ精鋭揃い。


大学先輩の金谷(中)がプロ初優勝した20年のダンロップフェニックスでは、中島(左)と並んで8位でベストアマを受賞しました


米澤もまた、プロの試合で優勝する一歩前まで行ったりと嘱望されたが、21年の転向と同時にパットのイップスを発症するなど、ちょっとモタついた。


「回りと比べられるし、比べられざるを得ない」と、焦りを感じた時もあったが、「キャリアが30年あるとして、どこでピークを迎えるかは誰にも分からないし、人によってピークは違う」と、教えてくれたのもジョーンズ氏だ。

「選手それぞれ自分の道を持っていて、その道からぶれないように。自分の中に芯をしっかりと持って、自分のゴルフ人生を歩いていければ、チャンスは来るのかな・・・」。

そう思えるようになったとき、次第に焦りが消えていき、自信も持てるようになっていた。
「自分ひとりだと分からなかったことも、考えを共有できる人がそばにいてくれるというのは本当にありがたい」と、しみじみと思っている。


ファイナルQT4位の資格で出場機会を増やした昨季、初Vには届かなかったが2位2回。

V争いで、ちょくちょくテレビにも映るようになった頃から風の便りで聞こえてきたのは、「ちょっと怖そう・・・」というファンの声。

「真剣にやっているがゆえなのですが、試合会場ではあんまり喋らなくなっちゃいますし、無口な人と思われちゃって」というのがひそかな悩み。


ジョーンズコーチや、海外遠征で仲良くなった海外選手の間でついたあだ名は「蓮=れん」の名前を文字って「レニー(Renny)」。
海外の愉快なキャラクターが由来のようで、意外にお喋り好きなのも、親しい知人や友人らはよく知るところ。
「仲間たちは、普段と全然違う人だと言ってくれるのですが。そういう部分もみなさまに、もうちょっと知っていただければ」と、印象一新も今季のテーマ。


9歳のある日、開店時間を間違えて家族と行ったインテリアの「ニトリ」横にあったゴルフ練習場で、初めてクラブを握った。

ゴルフ人生の出発点となったお店では今オフも「クッションや、寝具回り用の電気スタンドを買いました」と、大人になったいまも暇をみつけて足繁く通う“常連さん”だ。


大リーグの大谷翔平さんや佐々木朗希さんら、野球選手の活躍が華々しいが、県下で顕著な活躍をしているプロゴルファーは米澤だけ。

地元紙の岩手日報がインターネットで応援ページを開設したり、ローカル局「岩手めんこいテレビ」のサポートを受けるなど、知る人ぞ知る存在である。

恒例の正月特番でもしっかりと、今年の抱負や意気込みをアピールしてきた。


初シード選手として迎える今季、地元の期待もいかほどかと思うが、「今までと、何も変わらない。“近所のおじいちゃんと孫”みたいな関係性のまんま来ていますので。良ければ良かったねぇ、ですし、悪ければ頑張ってね、と。回りが一喜一憂すると自分もつられてしまう部分もありますけど、それがないのが一番いいのかな・・・」。

過度なプレッシャーを押しつけられることもなく「ほんとうにみなさん、あったかくて」と、活躍が増すほどに、地元への感謝も増していく。


昨年は、宮城県の石巻市でJGTOの復興支援活動に参加。大学先輩の金谷や、同級生の杉原大河(すぎはら・たいが)とスナッグゴルフを教えに行ったし、先月は地元でジュニアレッスン会を主催。



春には地元のゴルフ場で能登半島地震のチャリティコンペも計画中だ。

「プロゴルファーとして、少しでも困っている方々の力になれるように。自分にできることがあれば、何でも貢献していければな、と思っています」。


このあとしばらく地元で調整を重ねたら、今月末にはまた29日ー3月3日の「ニュージーランドオープン」に向けて発つ。

大会は2年連続の出場で、「試合でしか試せない、やれない、感じられないってこともある。またこの先、やらなければいけないことを見つけて帰ってきます」と、3月末の開幕に備える。


初シードで迎える今季。

米澤蓮(よねざわ・れん)は、怖くない。
「蓮」の名前にちなむ大輪を咲かせて証明する。

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